性暴力被害者が批判を受けたときの対応

ここ数年、SNSなどで性暴力被害者がバッシングに遭うニュースを目にするようになりました。
また、性暴力被害者は「あなたにも落ち度があった」などと、家族や友人から責められることもあります。私は被害者の実情を知っているだけに、このようなニュースを目にすると、なんだかやり切れない気持ちになります。

性暴力被害者が批判に遭わないのが一番なんですが、
批判された被害者に対して、私たちはどのような接し方をすればいいのでしょうか?

今回、性暴力撲滅に向けた啓発活動をなさっている「NPO法人しあわせなみだ」の
千谷直史理事を取材させて頂きました。

Q:性暴力被害者がバッシングに遭ったり、責められることを言われると、
どのような状況になるのでしょうか?

A:回復が遅れ、被害の傷に塩を塗る状態になるので更に傷が深くなるとも言えます。
ただでさえ性暴力被害で弱っているところに批判が来るわけですから、
なかなか回復する状況にはならないです。

Q:そのような批判は気にするなという人もいると思いますが

A:実は、被害者の方の中には「自分が気を付けていれば、被害に遭わなかったのではないか」と自分を責めているところがあります。そこに追い打ちをかけて批判が来るわけですから、さらに自分を責める傾向が強くなりますね。

そうなると、より精神的負担、悪影響が増えてしまい、嫌でも被害の状況が蘇り、
なかなか負のスパイラルから抜け出せないです。

被害者にとっては、99の励ましよりも、1つの批判が心に刺さってしまいます。

Q:では、被害者に対しては、できるだけポジティブなことを言えばいいということでしょうか?

A:それがなかなか難しくて、ポジティブなつもりでも被害者は否定的に捉えてしまうことがあります。

よくある例として、「あなたが魅力的だったから」などと、周囲はポジティブに言った
つもりでも、被害者は被害を肯定的に捉えるよう、うながされている気がしたり、
自分が性暴力を誘発したのではないかと思ってしまい、否定的に捉えてしまいます。

Q:ポジティブなことを言ったつもりでも否定的に捉えられてしまうと、
周囲は被害者と関わるのは、かなり難しいのではないでしょうか?

A:人それぞれ受け取り方が違いますから、これといった正解はないです。

ただ、どの被害者に対しても共通して言えることは、『私は、あなたの味方だよ』
といった行動を取ることや、雰囲気を作ることはできると思います。

例えば、被害者は自分自身を責める傾向にあるので「あなたは悪くないよ」と
伝えることで被害者の心の重荷を軽くすることはできますし、

また、私の知り合いで「周りに性暴力被害者がいないから、被害者支援がピンとこない」という人がいました。性暴力被害者は、そのような意識の人に被害のことを話そうとは思いませんよね。

言葉で伝えることが出来なくても「あなたの味方だよ」という意識を持つだけでも、
それが言動の端々から伝わると思いますし、ひいてはそれが雰囲気作りに繋がると思います。

Q:最近、SNSを使った批判が増えていますが?

A:被害者が批判的なSNSを見ないという方法もありますが、見ないように意識しても
目に触れてしまうこともありますし、また、思いもよらないところから否定的なことを
言われたりすることもあるので、完全に批判をシャットアウトできるかというと
それも難しいと思います。

はからずも批判を目にしたり、言われてしまった被害者は自分の気持ちを
言葉にすることも大変なので、そんな時は、
「アイツは最低な奴だ」とか「被害者の気持ちを理解しないで何が分かる」などと
被害者の気持ちを代弁するのも1つの接し方だと思います。

性暴力被害者は、端から見ると被害の影響も少なく普通に過ごしているように見えても、
実は周囲が思っている以上にかなりの精神的ダメージを負っています。

また、私は周囲からの理解も得られず疲弊する被害者を何人も見てきているので、
被害者が頑張らないでも加害者が適切に法的処罰を受けたり、被害者が根拠のない
バッシングを受けないでいい社会にできたらいいなと思っています。

<プロフィール>
千谷直史(ちや なおふみ)、しあわせなみだ理事
社会福祉士。1995年生まれ、山口県出身。
上智大学神学部を卒業後、日本福祉教育専門学校に入学。
親しい友人に性暴力被害者であることを打ち明けられ、NPO法人しあわせなみだの活動に加わる。現在は精神障害者を対象としたグループホームで働きながら、しあわせなみだでは中学、高校での講演活動やパートナー等が性被害にあった男性の会「寅さんのなみだ」の運営を行う。

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